『塩見岳から仙塩尾根を歩き北岳へ向いたい』
というお客様からのリクエストにより、今回はオーダメイドでプライベートツアーでした。
『1日目』
鳥倉登山口〜塩見岳〜北岳〜広河原を3泊4日で縦走するためには、初日に鳥倉口から塩見小屋まで行かなければならず、早朝出発のため飯田のホテルに前泊していました。
1日2本しかない登山口までのバスは早朝には無いため、車で向い駐車場から登山口までは1時間ほど林道歩き。
雨の中を傘をさしてのスタートでしたが、キソチドリ、喘息薬種(ズダヤクシュ)、コフタバラン、一面に咲くオサバグサの群落など、小雨の中もお花に詳しいNさんの解説付きで三伏峠までの標高差900mも楽しくスタート。
三伏小屋で休憩後は、三伏山や本谷山など緩いアップダウンを繰り返し、雨が降ったり時折晴れ間も出たり、風も涼しく梅雨時期としてはなかなか快適な条件の中、塩見小屋へ約9時間で到着。
小屋へ到着後はモロキュウと生ビールで乾杯しながら、今日出逢ったお花達のおさらい。
そして明日も長い行程の為に早々に就寝☆
『2日目』
朝起きると外は霧と小雨でしたが、ちょっとしたアクシデントに対応する為の準備などをしている間に青空が広がりはじめ、遠く槍ヶ岳や立山、乗鞍、中央アルプス、これから登る岩々しい塩見岳が勇姿を現し、昨日越えてきた本谷山には丸い虹が掛かり、気持ちの良いスタートになりました(朝の虹は天候悪化の兆候なのであまり歓迎出来ませんが)
岩場の急斜面になると久しぶりの3000m越えに皆さん少し息が苦しそうでしたので、何度も立ち止まり息を整えながら塩見岳へ登頂。
山頂ではガスが多めながらも青空も広がる山頂で、皆さんの元気のバロメーターでもある冗舌も健在でしたので、達成感のなか気分良く山頂での休憩を過ごせたようでした。
東峰を越えるといよいよ眼下には今回の一番の目的である仙塩尾根が広がります。
塩見岳からの下り斜面には、見事なハクサンイチゲ畑やキバナシャクナゲなどが咲くガレ場を下り、北股岳分岐からいよいよ仙塩尾根へ突入。
北アルプスとは反対で、西側が切れ落ちた岩壁になる稜線、針葉樹林帯、まるで誰かが手入れでもしてる庭かゴルフ場のような草原に整然と並ぶダケカンバと、その下に占拠するマルバタケブキやコバイケイソウが代わる代わる現れる、見た事ない変わった光景が広がる仙塩尾根。忘れた頃に登場しいつまでも付きまとうキバナノコマノツメなど、森林限界が北アルプスよりも300mほど高い事が影響していると実感できる稜線歩きで、水が豊かな森の中に建つ熊ノ平小屋へ到着。
まだ小屋開して間もないせいか忙しく修復作業中の小屋番さんに声を掛けると、笑顔で迎えてくれましたが、聞けば現在女性二人だけだという・・・。
山小屋の仕事といえばただでさえ重労働が多い中、小屋開け直後は修復作業も途方も無く大変。次に入ってくる1名も女性らしいので、早急に男手が欲しいとの事でした。
今回は小屋開け直後でヘリによる荷揚も済んでないので熊ノ平小屋では自炊が条件でした。
でも、こんな長い尾根の途中に寝泊まりさせて頂ける小屋の存在があるだけで充分。
以前、光岳小屋でも12名分の自炊を任された事もあるし、山メシは得意分野でもあるので食材や食器の重さなどは全く何の苦にもなりません。が、少し多過ぎました。
作り過ぎ余ったカレーを持って縦走するのは、、、という事で、インスタントラーメンを夕食にしてた小屋番さん達に食べるのを協力して頂きましたw
山小屋が少ない南アルプスの長大な尾根の途中で万が一不測の事態が起きた時も、一晩不自由なくビバークするくらいの食材や水はガイドのザックには入っていて当たり前だと思っているので、結局作らずに持って帰った食材もw
話しは戻りますが、熊ノ平小屋の小屋番さん女性スタッフはお二人ともとても自然で優しい方達なので、どなたか熊ノ平小屋へ入ってくれる男性スタッフ、良い人居ませんかね〜。
『3日目』
この日は本邦第二位と第三位の間ノ岳と北岳、その前後も3000mを越える稜線を歩く行程ですが、途中に北岳山荘の存在があるので、万が一の時は逃げ込める場所がある安心感はありました。
手を振り笑顔で見送ってくれる小屋番さん達と熊ノ平小屋にお別れし、小屋からの標高差500mの間ノ岳へ向いますが、その前に長野県、静岡県、山梨県の境になる『三国平』で、憧れだった素敵な仙塩尾根とはお別れ。
我々は間ノ岳の手前の三峰岳へ続く、荒々しい岩陵帯の登りへと入ります。
この『三峰岳』がなかなかでした。
あまりピンと来ない名前ですが、考えてみれば標高2999mといえば剱岳と一緒。
それにガレた痩せ尾根や岩場などはまるで穂高のような雰囲気なので、『三峰岳』というネーミングはあまりに簡単過ぎると感じるくらいでした。
まぁ直ぐ近くに本邦第三位の間ノ岳があるからオマケ的な位置づけはしょうがないんですかね。
そして仙塩尾根からこの辺までは、ずっと西農鳥岳の姿が特筆すべきほど格好良かったです。
そして三峰岳から更に岩陵を190mほど登り、ようやく間ノ岳へ登頂。
シーズン全体としては降雪は少なかったらしいですが、こちらも4月の寒波で降った雪のお陰で残雪が以前より多い印象でした。
間ノ岳からの下りも引き続き、色々なお花が咲く岩陵歩きで3055mの中白根岳を越え、北岳山荘でお昼のカップラーメン休憩w
ここからはあえて主稜線ではなくキタダケソウの多いトラバースルートを選びました。
キタダケソウを見せてあげたくてトラバースルートを選んだのでキタダケソウには会えましたが、お花畑の見事さと危険度が比例する厄介なルートです。
八本歯のコルへの分岐から北岳を越え、やっと三泊目の北岳肩ノ小屋へ到着。
到着した途端にザーザー降りになったのでタイミング良かったです。
⇧小屋到着後は生ビールで乾杯!
カメラを向けると皆さん直ぐカメラ目線でピースサインとかするので『自然にして!』と撮った不自然な一枚(笑
それにしても夕方到着された登山者や、消灯後の夜21時に到着した外国人パーティなど、特にメジャーな山には無茶する登山者が多いですね...どうか悲しい事故に遭いませんように。
連日長丁場の疲れも溜ってくる3日目、各々ストレッチやマッサージなどをして、この日も19時過ぎには就寝〜☆
『4日目』
夜中に外のトイレへ出ると、頭上には天の川銀河が広がる満天の星空!!
そして朝には鳳凰から御来光が登り、富士山と北岳が朝陽に浮かび、4日間の縦走の御褒美として最高の朝でした。
小屋泊まりの登山者も、テント場の登山者も、僕らも前日は全員が雨に濡れ到着したので、久しぶりの爽やかな朝に同じ喜びを噛み締めてました。
夏空が広がる中、名残惜しいですがこの日は右俣から大樺沢へ下りるルートでの下山。
雪渓へと下りて行くこの右股ルートも最後の最後までお花が沢山でした。
4日間、重いザックを担いで山あり谷あり雨にも打たれ歩き続けたので、流石に健脚な皆さんも疲労も溜っていたと思いますが、とても良いチームワークで最後まで笑い声が絶える事なく全員無事ゴール出来た事が何よりでした。(笑いが絶えるどころか最後まで大笑いでしたが)
今回はお客様からの希望により選んだルートだったので、自分には無い発想のお陰さまで僕としてもとても新鮮で素晴らしい体験、貴重な引き出しが増えました。
愛ある毒舌からボケの数々まで、毎日腹が痛くなるほど笑った参加メンバーの皆さん、熊ノ平小屋をはじめお世話になった山小屋のスタッフの皆さん、数え切れない感動と厳しさをくれた山に感謝です。
いつかまた誰かを連れ、今回のルートの感動を伝えに出掛けたいと思います☆
最後のしめは、クモマナズナ ~!
さすが!
このブログのとおり、いやそれ以上カモ、素晴らしい忘れられない山行でした。
ガイドさんのおかげです。
本当に、本当に、本当に、ありがとうございました。
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